天城京に見る現実。聖魔和合の真実はどこか？
カリスマデビルＸ（エックス）、出現！

　Ｗ仏ＫＩＮＧから受けた落雷の直後、
　タケルたちは天城京の別の場所へ転移していた。

　そこには悪魔をおそれるあまり、悪魔以上の非情さで悪魔属を狩る天使・デジ亀天帝（かめてんてい）の姿があった。
　撮影した被写体を写真に封じ込める能力で、片っ端から悪魔をレンズに捕らえていく。
　荒れ果てた廃墟で肩を寄せ合って暮らす、民間の悪魔属を…

　一方、悪魔・減画素魔（げんがそま）は周囲の景色にモザイクをかけてデジ亀天帝の写真撮影を妨害。
　逃げ惑う憐れな悪魔属を守るべく、懸命に救助を行っていた。

　　　

　福陽気妃のひとこと。
「デジ亀ちゃんも、悪魔と同じことしちゃってま〜す」

　あくまで自分の正義を主張するデジ亀天帝と、タケルたちは激論を戦わせる。
　仲間を失った悲しみや憎しみは痛いほど解る。
　だけど、旅の中で出会った悪魔属が全て「悪人」だったわけではない。
　やられたらやり返すことだけが、戦いじゃない。
　親友の時計を手に、さまざまに思いを巡らせていたカンジーが、叫んだ。

「僕たちの戦いは、悪魔を滅ぼすための戦いじゃなくて、
悪魔と共存するための戦いなんです！！」

　それを受けてゼウスは言った。
　だからこそ我々は次界卵を見つけ出し、あの平和な日々を取り戻そうとしている。
　平和は力尽くでは手に入らない。
　本当に倒さなければならない相手は、混沌をこの世界に広げた奴だ、と。




　Ｗ仏ＫＩＮＧによって、バカラ軍団もこの場所へ飛ばされていた。
　減画素魔の行動に心打たれたバカラは、悪魔属救出のために一肌脱ぐ。
　何よりダンディーラーが囚われの身なのだ。
　愛と男気に燃えて、ガスベラスはデジ亀のアジトへ直行する。
　そのメインモニタに、突如として魂壷が映った。
　魂壷の結晶体に鋭い眼差しが走り、臓腑を鷲づかみするような声が低く響く。

「バカラよ、倒れた者など捨て置け」

　バカラはたじろぎ、口走った。
「閣下…！」

　バカラが閣下と呼んだ声の主こそ、聖魔和合界に混沌を呼び込んだ張本人。
　強力な魔法結界をいともたやすく崩し、聖蓋をはずした一匹の「ハエ」。
　あのハエは分身に過ぎない。本体は、魂壷の奥底に潜む。
　力こそ全て、悪魔軍の頂点に君臨する、影の大総統。
　悪魔（デビル）の中の悪魔（デビル）。新時代のスーパーデビル――

　カリスマデビルＸ（エックス）が出現した。

　カリスマデビルはバカラに、混沌拡散に全力を挙げよと言った。
　Ｘ化によって甦ったデビルはまだ不完全。
　混沌の力が世界を支配したとき、完全復活が果たされる。
　悪魔の時代が始まるのだ。




　カリスマデビル閣下に敬意を払いつつも、バカラは己の信念を貫き救出作戦を断行。
　減画素魔の立体再生で、写真に封じ込められた悪魔属が元に戻る。
　バカラはダンディーラーを抱きとめ、ダンディーラーはバカラを見つめ…
　愛の炎が燃えるガスベラスに、怒りの赫火。デビル閣下が再び魂壷の姿で出現した。

　混沌の暗雲から突き出た魂壷を、タケルたちも目にする。
　魂壷に向かって走るタケルたちを、絶メッ鬼が立ち塞いだ。
　三度、絶滅の危機。防戦を強いられるタケルたちだったが…

　カンジーから蒼い龍のようなエネルギーを立ち昇ったかと思うと、
天源核を隠し持っていた絶メッ鬼のドクロ顔を破壊し、さらに炎幕を打ち消した。
　タケルはブーメランを取り戻し、すかさず攻撃。
　発動した天源核が、絶メッ鬼を微細な粒子へと分解し吸収する。
　絶メッ鬼が消滅すると、魂壷も去った。

　カンジー本人は何が起きたか全く覚えがなかったが、どうやら
魂壷の中からシャーマンカーンが力を注いでくれたようだ。
　シャーマンカーンは生きている。魂壷の中で。タフ鎧や、他の天使たちもきっと…。




　戦い終えたタケルたちは、ふとＷ仏ＫＩＮＧの言葉を思い返す。
「天使と悪魔は同じもの。現実を見よ」

「そうだ。そして何を見た、お前たち」

　悠然と、Ｗ仏ＫＩＮＧが巨大な像を現した。

「天使が襲い」
「悪魔が守る」
「現実を見たか」
「真実はどこか」

　善と悪の顔を入れ替えながら、Ｗ仏ＫＩＮＧは淡々と問いかける。
「わからないんだよ！」
　高みの見物をするＷ仏ＫＩＮＧに、タケルの返答は怒りがこもっていた。

「戦使よ、大きくなれ」

　未だ真実の見えないタケルに、Ｗ仏ＫＩＮＧは天源核を今しばらく預けることにする。
　何を企んでいるのかと、ゼウスが訝しむ。

「何も」
「混沌（カオス）の意味を知れ」
「正邪混沌（こんとん）、世の習い」
「旅はまだ」
「長い」

　そう言ってＷ仏ＫＩＮＧは新たなラックゲートを用意した。
　謎めいた言葉ばかりを残し、Ｗ仏ＫＩＮＧはかき消える。

　絶メッ鬼をけしかけて一度は奪った天源核を、あっさりと返す。
　タケルの成長を期待する言葉をかける。
　一方で、絶メッ鬼はカリスマデビルの潜む魂壷を守護し、悪魔軍に加担するような態度を取った。
　どちらの味方？　敵でも味方でもない？
　天源核と魂壷は自らの手で産み出したとも言う。
　Ｗ族とは、Ｗ仏ＫＩＮＧとは一体…？
　意図も、目的も。真意がまるで見えてこない。

　だがタケルは、天城京での体験を通じて、自分の戦うひとつの意味を見出していた。
　魂壷に行き、みんなを助ける。それがオレの戦い。

　デジ亀天帝も「倒す」ことから「守る」戦いに切り替えると宣言。
　混沌の中にも、生き残った天使属がまだいるはず。
　震える天使属を助け出すため、デジ亀天帝は天城京を飛び立った。

　福陽気妃は天城京の天使属をデジ亀天帝から託され、留まることに。
　タケルたちはラックゲートに乗って次界卵捜索の旅路に戻る。




「魂壷。デビルよ、貴様そこにおったか」

　創造界帝Ｗ仏ＫＩＮＧが、粛然と独り言つ。

「Ｗ仏ＫＩＮＧか。面白い奴が現れたものよ」

　カリスマデビルＸが、不敵に微笑う。
　聖魔和合と混沌の背後でうごめく大いなる意志は、互いに互いを察知し、認識した。

　小さき命は、タケルたち。
　スーパーゼウスは携帯電話に逆戻り。
　多くの謎と問題を抱えながら旅を続ける彼らはまだ、巨悪カリスマデビルの存在を知らなかった。
第１７話「カリスマデビルＸ、出現！　のウワサ」より